# ブロックチェーン上で過ごした GW の感想 2022
ボリューム多いし時間無いので雑な文章…そのうち清書する!(しないフラグ)
## はじめに
昔々の話ですが、iPhone の SDK がリリースされてすぐにアプリを開発して App Store で公開したところ、当時日本でそこまでやっているエンジニアがいなかったためお仕事の依頼が途絶えず、現在、宮崎が生きているのはそのおかげです。
ブログのネタを探すために常に新しい技術を追いかけるということをやっていたのですが、随分前に立ち止まってしまいました。
GW ひとり合宿も、3 日間で React Native 入門してアプリをストアに公開したのが、3 年前(と Facebook がリマインドしてきた)。興味が持てないままの機械学習もコモディティ化してきて、ライブラリ使う感覚になってきましたね。
GW 前に『[[とある CTO の読書案内 2022 GW]]』という記事を書いて、その中で Web 3 を若干 dis っていたのですが、ちゃんと dis るにはちゃんと体験しなければと反省しました。(著名人を dis る時には著書を買って読むタイプです)そこで、とりあえず NFT を購入してみようと思い立ちます。
とりあえず、一番盛り上がっている Ethereum 上だけで活動してみることにしました。
[Home | ethereum.org](https://ethereum.org/)
## 結果
※ ETH/JPY は5/3 時点(1 ETH = 373,373 JPY)で計算
※ NFT の価格は購入時から変動していないものとする
```
円から ETH へ:0.37 ETH (¥138,148)
NFT 購入(5 点):0.0733 ETH (¥27,368)
GW 末の残高:0.158 (¥58,993)
GAS 代:0.1387 ETH (¥51,787)
```
注目すべきは、GAS 代。Ethereum 上で行動するたびにかかる手数料です。
27,368 円分の NTF を購入するのに 51,787 円の手数料(GAS 代 + 各種実験費用)を支払っています。
[Gas and fees | ethereum.org](https://ethereum.org/en/developers/docs/gas/)
Ethereum に参入する人が増えて GAS 代が高騰しています。100 円を送金するのに 500 円の GAS 代がかかる。少額の決済や購入に使うにはつらいですね。
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# NFT の購入目的
[Non-fungible token - Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Non-fungible_token)
NFT バブル中なので、マネーゲーム的な内容を扱ったニュースが多いですね。GAS 代を考えると、ある程度の金額でないとコストが高いという側面もありそうです。
一方で、実際に体験してみて、もっと草の根的な世界も見えてきました。
まずは、コミュニティへの参加。例えば、アーティストが NFT の購入者向けのコミュニティを立ち上げています。(現在は Discord を使っているコミュニティが多いです)
コミュニティに入ると、交流ができるだけでなく、新しい作品が安く買えたりします。
日本では、まだそのようなコミュニティは盛り上げっていないようです。どちらかというと、NFT を売買しているという括りの全体的なコミュニティがゆるっと形成されています。
以前、各地で開催されていた note で何か書いている人交流会的な雰囲気です。
また、GAS 代が問題にはなるのですが、趣味クリエイターの繋がりもあるようでした。
長女は歌い手として活動していて、顔出ししていないので YouTube には静止画+歌を投稿しています。その静止画は絵師さんにお金を出して依頼しているそうです。これが NFT でのやり取りになると便利そうですよね。
それから、コンビニプリントでイラストを配布する。今では企業が入ってきていますが、草の根的に盛り上がった手法だと思います。これと同じノリが NFT でも起こっています。
# NFT を購入した感想
NFT のメリットは、プラットフォームに縛られないということです。Kindle の電子書籍は Amazon の端末やアプリ以外では読めませんが、NFT は A マーケットで購入して B マーケットで販売する、あるいは個人間でやり取りするということが可能です。
このへんをよくわからずに購入オファーを出して無駄に GAS 代を払ってしまいました。
例えば、自分が欲しい作品の保有者が Foundation というマーケットで購入していた場合。その保有者が最大手の OpenSea にもアカウントを持っていたら(OpenSea が入口の人は多いので可能性は高い)、OpenSea にも作品が並びます。
そこで、OpenSea 上で購入オファーを出すのですが、保有者はそれを見ているとは限らないのです。アカウントを持っているだけなので。(一定額以上は通知される機能があるのですが、それも見ているとは限らない)
[OpenSea, the largest NFT marketplace](https://opensea.io/)
[Foundation](https://foundation.app/)
なので、どこのマーケットで購入されたものか、それから保有者の目的は投機なのかコレクションなのか(投機なら金額を詰めば売ってもらえるかも)、見極める必要があります。
それで言うと、すべてはブロックチェーンに記録されていますから、ネットストーキングはやりやすいです。
購入すること自体にゲーム性があり、ウォレットに保有 NFT が集まってくるコレクション性もあります。ソシャゲ感もあるのかもしれません。
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ただ、得られるのが「所有感」ということに注意が必要です。所有権ではない。著作権はクリエイターが保持していますから、勝手に複製、改変、再配布はできません。
SNS のアイコンにするのもグレーなのかも。
# NFT を作る
OpenSea だと無料でデジタルデータを NFT 化できます。転送や販売に GAS 代がかかるのと、売れた場合に価格の一部を手数料とし支払います。
[OpenSea, the largest NFT marketplace](https://opensea.io/)
自分のプロフィールアイコンデータを NFT 化してみました。気軽になんでも NFT 化できるのは、『HUNTER×HUNTER』のグリードアイランド編っぽいですね。
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[Hibi's Profile Icon type E - Hibi365 | OpenSea](https://opensea.io/assets/0x495f947276749ce646f68ac8c248420045cb7b5e/50628496262418179475659969108187423524572962982642310223623863411341753581569)
ただ、NFT 化するだけでは(多分)パブリックなブロックチェーン上に記録されていませんから、他のプラットフォームで利用するためには転送や売買をする必要があります。たぶん。
# Smart Contract
Smart Contract はブロックチェーン上での契約を自動実行する仕組みです。
[Introduction to smart contracts | ethereum.org](https://ethereum.org/en/developers/docs/smart-contracts/)
試しに実装してみました。
やってみたのは独自トークンの発行。ERC-20 という規格に従うと Ethereum と互換性を持つトークンを作ることができます。ちなみに、ERC-721 に従って独自 NFT の作成も可能です。
`TOFU` という独自通貨を作りました。
流通先で誰が誰に送金したとしても、その 10% が宮崎に還ってくるという夢の仕様になっています。
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[Tofu (TOFU) Token Tracker | Etherscan](https://ropsten.etherscan.io/token/0xF6B6048825548bDefcD3C16F6d21a579b32f7F12)
開発言語は、Solidity という様々な言語の要素が入ったオブジェクト指向な静的型付け言語です。
そんなにガツガツとロジックを書くことはないでしょうから、ハードルは低いと思います。
[Solidity Programming Language](https://soliditylang.org/)
Smart Contract をデプロイすると、世界中のコンピューターに行き渡りますから、後から修正をすることも削除することもできません。まずは、ローカルのネットワーク、そして公開されているパブリックなテストネットワークでのテストが必要です。
あと、ソースコードは誰でも閲覧できる状態になります。これによって透明性が担保されています。
# Dapp(分散型アプリ)
残念ながら、GW 中に Dapp を作るところまではいけませんでした。
[Decentralized application - Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Decentralized_application)
Dapp は Smart Contract をバックエンドとして利用するアプリです。ざっくりいうと、従来のアプリが Facebook などの API にアクセスして動作するのに対して、代わりに Smart Contract にアクセスする感じです。
例えば、NFT マーケットプレイスの OpenSea や、仮想通貨取引所の Uniswap などが Dapp です。
[OpenSea, the largest NFT marketplace](https://opensea.io/)
[Home | Uniswap Protocol](https://uniswap.org/)
web3.js を使うと簡単に実装できそうなのですが、フロントエンド開発環境が整っていなかったので断念しました。フロントエンド得意な人はすぐ使えそう。
[web3.js - Ethereum JavaScript API - web3.js 1.0.0 documentation](https://web3js.readthedocs.io/)
# ENS
Web 上で IP アドレスでアクセスする代わりにドメイン名を利用するのと同じように、Ethereum 上ではアドレスがハッシュになっているので代わりにわかりやすい名前を付けることができます。
(アドレスのタイプミスで巨額の資産が失われているのだとか)
[Ethereum Name Service](https://ens.domains/)
試しに、 `ijgngroup.eth` を取得してみました。
(鶴岡さん、鍋島さん、お安くしとくので買ってください!)
![[IMG_0039.png|200]]
[ENS App](https://app.ens.domains/name/ijgngroup.eth/details)
## IPFS(分散型ファイルシステム)
NFT とデジタルコンテンツの紐付けはどうなっているか。NFT に含まれるメタデータにコンテンツの URL が記載されています。つまり、その URL の先のコンテンツが削除または変更されたら…なんてこった!
いくつか NFT を買ってメタデータを確認したところ(買わなくても確認できます)、Google Photo の画像を指定しているものもありました。
そこで登場するのが、IPFS です。ファイルが世界中のコンピューターに分散されます。P2P 型のファイル共有ソフトをイメージすると良いかもしれません。
[IPFS Powers the Distributed Web](https://ipfs.io/)
試しに、ちょっとした web サイトを IPFS 上に保存してみました。さらに、ENS のレコードにそのアドレスを保存します。
対応アプリからは `ijgngroup.eth` でアクセスできますが、通常のブラウザからは `ijgngroup.eth.link` でアクセスします。
https://ijgngroup.eth.link/
IPFS の課題としては、参加しているコンピューターは(マイニングと違って報酬がないため)コンテンツを保持するモチベーションがないため、放っておくと無くなってしまう可能性があるということです。
上記サイトの場合は、自宅のマシンを常に IPFS に繋いでいるので常時ファイルを誰かと共有し続けている状態となっています。(開くのが遅いですね or 開かない)
もしくは、お金を払って解決するという手段もあります。
## 脱中央集権のメリットは?
いろんな説明を読んだり聴いたりしたのですが、誰も納得のいく説明をしていません。こんなことができるという例が挙がるのですが、それは中央集権でも実現できていて、分散するメリットはないように感じます。あるいは、それ分散してないですよね、という例だったりします。
クリエイターエコノミーと声高に叫ばれていますが、それは Web 2.0 で既に実現されています。誰にでもチャンスがあって、誰もが成功できるわけではない。それは、Web 3 においても変わらない気がします。
発見されるというプロセスにイノベーションが起きない限り、この状況は変わらないのではないでしょうか。
一方で、DAO(分散型自律組織)については興味が出てきました。Web が資本主義に飲み込まれると書きましたが、DAO は別軸で語ることができそうです。これからあれこれ試してみたいと思います。(トーフラボを DAO 化する?)
[Decentralized autonomous organization - Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Decentralized_autonomous_organization)
## これから
日本でも暗号資産を持つ人は増えるはずです。
Coincheck などの取引所がアフィリエイトプログラムをやっています。そのおかげで(そのせいで)、暗号通貨や NFT のわかりやすい(コタツ)記事が溢れかえっています。
これによって、リテラシーがそれほど高くない人でも参加しやすくなっています。
また、LINE NFT など円で NFT を購入できるマーケットもあります。
[LINE NFT | 好きがもっと見つかる、ひろがる。](https://nft.line.me/)
それに、コンテンツの NFT 化って超かんたんなんです。(ただ、OpenSea などのプラットフォーム上で NFT 化するのにはデメリットもあります)
OpenSea では、クリエイターは作品が二次販売された時に受け取る報酬を設定することができます。従来だと、クリエイターが収益を得るのは一時販売の時のみでした。クリエイター界隈が活気付くのもわかります。
[OpenSea, the largest NFT marketplace](https://opensea.io/)
ただ、これは OpenSea の独自実装なので、別のプラットフォームで二次販売が発生すると効果がありません。
Ethereum の課題として、GAS 代の高騰があります。そのため、GAS 代のかからない Ethereum Killer と呼ばれるチェーンが注目されていますし、今後予定されている Ethereum 2.0 ではこの問題が解決されると言われています。
[Ethereum upgrades (formerly 'Eth2') | ethereum.org](https://ethereum.org/en/upgrades/)
GAS 代の問題がなって少額の決済や送金ができるようになると、かなり状況が変わるかもしれませんね。
## さらにこれから
日本ではまだ始まっていない Twitter Blue には、NFT をプロフィールアイコンとして設定する機能があります。アイコンが六角形の人がそれです。
![[Screen_Shot_2022-05-09_at_23.36.44.png]]
![[Screen_Shot_2022-05-09_at_23.36.59.png]]
[About Twitter Blue](https://help.twitter.com/en/using-twitter/twitter-blue)
さらに今後は、ユーザーが保有する NFT を一覧にする機能が公開されるかもと言われています。
どの NFT を保有しているかが、ステータスになる時代が来そうですね。購入したものだけではなく、社会活動に参加したら受け取れる NFT など、自分がどういう人間かを公開できる。
元 ZOZO の前澤さんがバスキアの絵を買ったことでアート界隈の社交場への参加権を得たように、NFT を保有していることで参加できるコミュニティが生まれています。
なぜ、Airbnb や Uber が普及することができたのか。元々、知らない人の家に泊まったり知らない人の車に乗ることは非常にリスクの高いことでした。実際に、ヒッチハイク中に犯罪に会うケースも多かった。
そこで、Airbnb や Uber は Facebook のアカウントを紐づけることで、その人がどういう人間かを判断できるようにしたのです。Facebook の友達やフィードの偽造って難易度が高いですよね。
その結果、Airbnb や Uber はここまで発展することができました。
日本の(恋活・婚活の)マッチングアプリも身分証明書と Facebook アカウントで身元確認をしていました。(最近では Facebook ユーザーが減ったのと、身分証明書と顔のスキャン技術が発達したため、Facebook との連携は必須ではなくなりました)
一般的に、マッチングアプリでは、自分が好きなものをプロフィールに表示する機能があります。Pairs ではコミュニティ機能と呼ばれ、複数のコミュニティに入ることで自分がどういう人間かをアピールします。(このミュージシャンや映画が好きだとか)
ただ、この情報って詐称できますよね。そこで、ここに NFT を表示する機能があると、信頼性がアップします。ファンクラブの会員券だとか、会社や自治体が発行する NFT だとか)
NFT の保有に限らず、自分の活動履歴がブロックチェーンに記録される。それは改竄不可能です。国や会社のお墨付きが不要なのです。国や会社に所属する必要がない。
会社や自治体が発行する NFT と書きましたが、それは現在の肩書きではなく、過去にその会社や自治体に何かしらのコミットをした記録だと考えてください。
会社に所属する必要はありません。面白そうなプロジェクトがあればコミットする。その履歴がブロックチェーン上に残る。労働だけではなくて、社会活動へのコミットも。
そういうキャリア形成が可能になりそうです。働き方や生き方が変わりますし、会社も現在の形である必要はなくなります。 (現在の 0 or 1 よりも自由度が上がる)
そうなると、実名で活動する必要もなくなりますね。(まあ、宮崎は仕事の場でも実名では活動していないのですが)
ということで、現状のマネーゲームが落ち着く頃には、面白そうな世界が見えてきそうな気がしています。むしろ、面白い世界を作りたい。
(だけど、Instagram が NFT をサポートするらしく、まだまだマネーゲームは続きそうです)